木曜日

愛すべき人々4(昭和編)

 

めずらしく飛び込みで面接に来た男がいた。

 

履歴書も、身分証明書もなく、数枚の新聞紙が

入った紙袋をもってふらりとやってきたらしい。

 

私が入社する2年ほど前と聞いた。

大阪から流浪して来て、いよいよ

食べるのも困ってたどり着いた。

 

吃音持ちで面接時はモジモジしていたらしい。

我が優しきO店長に拾われ、私がいた5年間も含め

10年間在籍していたようだ。

 

前職は十三ミュージックという

ストリップ小屋の照明係だったと、本人の談。

 

普段は吃音が出て言葉が出てこないのだが、

なぜか呼び込みが流暢だった。

 

昔はパチンコ専門の口上集(呼び込み)の

カセットテープも販売されていて、

「北は北海道から南は九州沖縄まで」の

地方色の強い呼び込みマイクを使う

ベテラン社員もいて、聞いていて面白かったものだ。

 

彼は一生懸命1本のテープをコピーし、

オリジナルの呼び込みマイクを習得していた。

 

「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ・・・」

舌足らずだが愛嬌のある声で、

この時ばかりは生き生きとしていた。

 

しかし、この呼び込みマイクも

「音がうるさい」「客を煽っている」など

平成に入ってから徐々にホールでは聞けなくなった。

 

わたしは今でもカラオケに行くと

歌の前に定番の呼び込みを披露します。




写真素材 pro.foto

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