お持ち帰り （昭和編）

 

Ｔ市で勤務していた頃の出来事。

 ２階の事務所に数人の男達が突然乱入してきた。

一見して普通の方々ではなく、緊張が高まりました。

｢おんな、おるやろ、出してくれるか？｣

 

地元の職安の紹介で ３ヶ月ほど前に入社した

賄い係のＡさんのことでした。

独身の女性で、「入寮ですぐに仕事ができます」

「よろしくお願いします」と

職安からの紹介でもあり、即決採用でした。

 

２８才の小僧の私では話になるはずもなく、

すぐに用心棒的な存在であった恐持ての

店長が駆け付け・・・

 

｢おんな、渡して帰ってもらえ｣

 

もらっていくとか、渡すとか、

物じゃぁありません。

入社したばかりとはいえ、当社の社員です。

抵抗感はありましたが、そのままその女性は

連れ去られました。

 

女性は九州で その筋の方に囲われていた所

から逃走し、Ｔ市で当社にうまく潜り込めた

ところが、市内で目撃され 、通報されたようで、

ヤクザの世界での回状（情報網）はスゴイものです。

 

実はその女性とホール主任とはすでに関係が

できていたのですが、

｢ほな、もらっていくでぇ｣

｢はい、どうぞ。ご苦労様でした！｣ 

とその主任。

その変わり身、割り切りの良さ。

勉強になるなぁ～。

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