右も左もわからない外国で私と二人で生活し、
二人の娘を育て、
日本語はテレビで覚えた。
子供たちとよく頑張ったと思う。
もともと猜疑心の強い性格だったと思うが、
ある時期から様子がおかしくなった。
周辺の人間は自分が知っている人間ではない。
入れ替わった。
私も他人にすり替わったと言い出した。
SFのような世界だ。
本人も苦しんだようだが頑として病院へは行かない。
娘たちも戸惑い苦しんだようだ。
私が仕事を辞めることになり、最近の1年間は
自身の疑問にも少しずつ答え合わせをしているような感じで
落ち着いてきているようだが。
外出すると地面が揺れる、
ショッピングモールでは特にひどい。
TVの映像やNEWSはおかしい。
嘘ばかりだ。トランプは正しい。
世の中の人は変だ。
今の疑問を過去の自分の身近な出来事と
比較し、結び合わせ、パズルを解くかのように
1日中、独り舞台(部屋)で独白劇を繰り返している。
しかし、彼女の言うことをよくよく吟味してみると
ここは地震大国だ。
有感、無感も含めて確かに大地は揺れているのだろう。
TVは出始めのころから
「一億総白痴化」といわれ、
想像力や思考力が低下するメディアだ。
面白くもない。
特に最近はあきらかに偏向している。
世の中の不条理を喚起することもない。
子供たちが早く自立し自分から離れていくことは、
孤立した外国で唯一自分の分身がはがされていくようで
耐え難かったのだろう。
世間はだんだんと「世知辛く」なり、
「温情」もなくなり、たしかに変だ。
どうも彼女が「おかしい」のではなく、
「世の中」が
おかしくなっているのかもしれない。
写真素材 pro.foto
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