月曜日

妻 (2)

 

右も左もわからない外国で私と二人で生活し、

二人の娘を育て、

日本語はテレビで覚えた。

子供たちとよく頑張ったと思う。

 

もともと猜疑心の強い性格だったと思うが、

ある時期から様子がおかしくなった。

周辺の人間は自分が知っている人間ではない。

入れ替わった。

私も他人にすり替わったと言い出した。

SFのような世界だ。

本人も苦しんだようだが頑として病院へは行かない。

娘たちも戸惑い苦しんだようだ。

 

私が仕事を辞めることになり、最近の年間は

自身の疑問にも少しずつ答え合わせをしているような感じで

落ち着いてきているようだが。

 

外出すると地面が揺れる、

ショッピングモールでは特にひどい。

 

TVの映像やNEWSはおかしい。

嘘ばかりだ。トランプは正しい。

 

世の中の人は変だ。

 

今の疑問を過去の自分の身近な出来事と

比較し、結び合わせ、パズルを解くかのように

日中、独り舞台(部屋)で独白劇を繰り返している。

 

しかし、彼女の言うことをよくよく吟味してみると

ここは地震大国だ。

有感、無感も含めて確かに大地は揺れているのだろう。

 

TVは出始めのころから

「一億総白痴化」といわれ、

想像力や思考力が低下するメディアだ。

面白くもない。

特に最近はあきらかに偏向している。

世の中の不条理を喚起することもない。

 変だ。

 

子供たちが早く自立し自分から離れていくことは、

孤立した外国で唯一自分の分身がはがされていくようで

耐え難かったのだろう。

世間はだんだんと「世知辛く」なり、

「温情」もなくなり、たしかに変だ。

 

どうも彼女が「おかしい」のではなく、

「世の中」が

おかしくなっているのかもしれない。


 

 


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