金曜日

口車

 

そのパチンコ店は、

田舎でも本当に、結構な田舎で、

山の上の峠にちかい「山の中」の場所だった。

「よくこんな場所に作ったものだ」と地元民。

 

駐車場の横には(地元では有名な)古墳があり、

夜間はネオンにつられてカブト、クワガタなど、

いまなら垂涎の昆虫がいっぱい寄ってくる。

 

「いい車がある」という社長の口車に

乗せられて入社したら、50CCバイクだった

という最悪の詐欺に遭い、私はしばらく、その

社用車「パッソーラ」で走っていた。

 

フルヘルでないと夜間、多様な昆虫がぶつかってきて

目を開けていられない。身体にもぶつかってくるので

スピードも出せない。

 

そんな場所に位置するパチンコ店が「売れた」。

 

社長から売却したので、引継ぎするようにと指示され、

行ってみると、

新社長は68才、番頭役の店長は70才。

パチンコ店の経営は初めてという。

 

私の社用車同様、

うちの社長の口車に乗せられたようだ。

 

初めてなので、しばらく慣れるまで

営業の指南をして欲しいといわれた。

 

うちの社長は「それも価格のうちのサービスだ」

と、渋々行かされた。

 

まだ28,9の若造が老人2人に手ほどきをするくらい

だからこの店の行く末は見えていたが、出来るだけの

ことはした。

 

その後10年ほど営業され、廃業した。

元手は回収できたのだろうか。 





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