金曜日

シャッターチャンス

 

14才の冬。大阪の箕面に友人数名と遊びに行った。

「猿」と「滝」で有名なところだ。

ここの猿は一時期、悪名高く、ガラが悪かった。

観光客の荷物を手から無理やり強奪し、山へ逃げ帰る。

車のボンネットにも平気でのっかってくる。

人間に慣れすぎて、舐めていたのかもしれない。

今は、保護の観点から観光地に出てこないように

餌場を山の中へ誘導し、姿を見せないようだ。

 

そんな山へ友人たちと分け入り、

ちょっとした山登りを楽しんでいた。

私は草地が生い茂った急峻な坂を先に登り、

フィルム式の簡易カメラで

友人たちを撮ろうと構えていた。

 

下から叫び声が。

思わずその方向へカメラを向け、シャッターを押した。

 

友人の一人が手を放し、崖地から転落してしまった。

草地が生い茂っていても20メートルほどの高さだ。

 

「大変だ」「119番だ」

 

生まれて初めて「救急車」に同乗し、病院へ。

大きな外傷はなかったが、保護者も駆けつけ、

レントゲンも撮り、大事になってしまった。

 

後日、彼はいつものように

「ひょうきん」のままで、無事、登校してきた。

 

あの時撮ったフィルムを現像すると、彼が

両手を広げ、目を見開き、空中に浮いて、

落ちて行く瞬間を捉えていた。

 

まさに「息をのむ瞬間」だった。




写真素材 pro.foto

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