月曜日

新台調整

 

深夜1時くらいから、新台の釘調整を始める。

台数は18台ある。すべて同じ機種だ。

 

天釘から均等に下方向へ釘の角度を合わせていく。

大半のメーカーの釘の角度は、新台の時から

上向きで、5°前後で、納品される。

 

以前見た、遊技機製造工場での紹介ビデオでは、

機械でセル合板に釘を打ち付けていき、

最後に人の手で、ばらつきをハンマーで修正していた。

 

最近は、そういうひと手間もメーカーでは

省いているかもしれないが、「藤商事」社のパチンコ機は、

納品時から釘の並びが、きれいに統一されているので、

納品前に、人の手で揃え直していると思う。

 

以前いた会社の方針として、釘の高さは地面に対して

並行だが、それだと、遊技台は3分から4分5厘で少し

寝かせているので、板に対しては、かなりの下げ釘になる。

 

釘は上げると、遊技玉に絡みやすく、

玉の勢いを殺して甘くなる。

下げると、滑りやすく、玉の勢いも増し、

玉が暴れるので、辛くなる。

 

羽根物のドボン=はかま

(始動チェッカー上の並び釘)も、

左右大きく割って、遊技玉を暴れさせ、かつ、

指導チェッカーの足二本釘も、

見た目は広がって甘そうに見せ、実際は、

あまり入らない釘に、意図的にしていた。

 

当時在籍していた会社の方針は、全部の釘を、

同一の高さ、同一の角度に、合わせなければ

いけなかった。

上から順番に左肩まわり、風車上、左袖。

次は右から、同様の手順で調整していく。

次はアタッカー、下部のあまりゲーム性に

関係のない釘も残さず叩き直す。

命釘周辺のケリ釘、誘導釘、すべり釘も

全台、同じ「釘」に合わせる。

 

これらの手順を飛ばすと、叩き忘れの箇所が

出てくる。最後に、立ち上がって、上から

真っすぐかどうか、再確認する。

横から、目線を上から下へゆっくり降ろしながら

高さが同一かどうか、再確認する。

 

昭和の時代、最初に教わった「釘師」には

釘をきれいに同一にするような意識はなかったと思う。

実際、中腰で、立ったまま調整していた人もいた。

 

今でこそ、中古移動の際は、「釘シート」で釘の頭を

シートに点で合わせる作業(釘を極端に曲げる行為の防止)

もあるが、当時いた会社は昔から「統一ゲージ」として、

各、機種ごとにシートに全部の釘の頭を点で記入し、

チェーン店で共有していた。

 

私の感覚では、マジックで釘の頭を点で記しても、

ミリ単位では誤差も多く、手間暇だけかかり、

無駄な作業だったと思うが。

 

大切なのは、釘に対して、1本1本、正面から

真っすぐに見る目線を養うことで、より正確に、

早く、たたける。数本叩くごとに、上から横から、

確認していたのでは時間が掛かる。まっすぐ見て、

真っすぐきれいに叩ければ、上、横は、

最後の確認だけで良い。

この感覚が、はっきりと自信として出て来るのに、

こういう意識で、毎日毎日たたいて3年ほどかかった。

 

ここまで苦労しても、18台はすべて同じ

データには、ならない。

設置した遊技台の歪みや勾配の誤差、

セルに打たれた釘の最初からの誤差など、1台1台、

少しずつ違うからだ。

 

新台調整に完全はなく、

「平均値に近づけるため」完璧な調整を

目指す、のだ。




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