「あっ!5百円落ちている」
「もうけっ!」
グリーン上の5百円硬貨を拾いあげ、
O課長が喜んでいる。
「あほ!わしのマーカーや!」
ゴルフボールのマーカー(印しるし)として、
常務はいつも5百円硬貨を使用している。
おっちょこちょいな男だが、憎めない。
いつもバカ話をして皆を笑わせている。
ほとんどがホラ話だが。
口が達者で話し出すと止まらない。
舞台上の漫談師のようだ。
仕事は少し乱雑だが手が早い。釘調整も達者だ。
入社は私より5年以上早い。
店の中の従業員の出来事、噂、あることないこと
なんでも面白おかしく話すので、
営業部のムードメーカーだった。
彼は一般募集から入社し、早々に目をつけられて
役職者に登用され、割と早い段階で、
本店の店長も経験していた。
昭和の終わりから平成にかけては店舗数も
どんどん増え、人材不足のために一般募集で入っても、
やる気さえあれば、すぐに登用された。
中途入社で、特別のスキルがあるわけでもなく、
目先が利いて(業界では気が走る、気が回る)、
根性があれば(滅私奉公)、チャンスを掴めた。
良い時代だった。
しかし、彼も社内で、それなりの年数がたつと、
会社はそれまでの実績など関係なく、毎年入社してくる
幹部候補生のために、古株は順番に肩を叩かれる。
パチンコ業界的には40才くらいが一区切りか。
新卒で入社して7~8年で一人前なら、
30才前後で店舗長に。
それから伸びる人材は営業部で、10年ほど部課長で
勤務し、次に下から上がってくる人材と入れ替わる。
会社(経営者)は常に新しい人材に囲まれ刷新できる。
働く方は「駒」だ。
営業部のムードメーカーも私同様、40才前後で
会社から放逐され、同じ業界で管理者として横滑り
できたが、あまり長くはなかった。
新しいところは、店舗数も少なく、
経営陣に問題があり(借入が多過ぎた)、最後は
良からぬ不正の噂も出て以降、消息不明となった。
私のパチンコ業界歴35年間で、現在も付き合いや
消息が分かっている人物は2名だけで、
あとの方は全て業界では消息不明となった。
まあ、普通の仕事に転職しただけだろうがね。
写真素材 pro.foto
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