金曜日

争い②


清掃会社の方は私には、まったくの未経験なので会社への進言も

なにも、右も左もわからない状況だった。

社内でもパチンコから来た新参者のため社員も様子見だった。

 

仕事を理解するには、社員と同様にシフトに入って、同じ作業を

経験しなければわからない。

 

清掃業の朝は早い。し尿の収集は6時には出発する。

大型ごみの回収・市内のゴミ回収は7時から始まる。

パチンコ店の閉店は23時。報告・指示終了後24時に

帰宅し、翌朝清掃会社へ出社する生活が続いた。

 

し尿の収集は原則3名だが、2名で行っていた。

助手としてバキュームカーに乗り込み、午前中に終了する。

 

大型ごみ回収は、こちらも原則は3名だが、2名で経費削減だ。

助手として、事前に連絡のあった不要家具やベッドなどを、ほぼ

一人でパッカー車へ放り込み粉砕していく。腕や指を挟まれ切断

した社員もいる。油断大敵だ。

 

夜間はホテルの浄化槽清掃・汚泥の抜き取り・処理なども経験した。

し尿も、汚泥も、生ごみも、場合によっては手でつかんで処理もした。

営業にも回った。業者組合にも出席した。何も厭わず何でもやった。

 

オーナーからの要請で、経費削減、給与カットをしなければならな

かったからだ。

 

市内のごみ回収は、私が心臓手術のために数か月間職場離脱したので

以降は機会がなく経験しなかった。

 

ある日、ごみ回収車が人身事故を起こした。相手は自転車に乗った

主婦で、けがの程度は軽いとの報告だったが、地元のやくざの連れ

だったようだ。

事故当事者が、あいさつに伺う旨を伝えると、「事務所に来い」と

云われた様だ。

「事務所」に行くのは通常ならお断りだが、被害者側の指定なら

仕方がない。腹を固めるしかない。

菓子折り、缶ビールを2ケース購入し、当事者と私2名で向かう。

車内で万が一の時の打合せをし、指定の住所に。

 

何のことはない。被害者側の自宅だ。主婦の連れはたしかに一般人

ではないが、まだ若く修行中のようだ。治療代、休業補償、慰謝料など

あれこれ言ってくるが、こちらは「保険会社へ一任」とだけ伝えて、

世間話をして帰って来た。

保険会社には、かなりごねていたようだ。




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