火曜日

パチンコ店事務所にて


「あほ、ボケ、どこのガキじゃあ!」

受話器を掴みながら大声を張り上げてしまった。

頭に血が昇ってしまい、興奮が収まらない。

 

数日前から店舗の28才の社員に頻繁に借金の取り立ての

催促の電話が入り、この日は私がたまたま事務所で控えて

いたところ、電話がかかって来た。

 

「社員の○○君に代わってくれっか?」

「どちら様でしょう?」

「彼に金を貸してるもんや。代わってくれっか?」

 

「これは当社の会社の電話です。個人の要件は彼の携帯電話へ

お掛け願いますか」

 

「携帯は不通やから、電話しとるんじゃ!」

だんだん言葉尻が威圧的なってくる。

 

「この間からこの会社の電話へ何度もかけておられるでしょう」

「先ほどもお伝えした通り、個人の要件なので、ここに電話は

しないで下さいよ」「仕事の支障になりますので」

 

事の次第は数日前に問題の社員から聞いている。

数か月前に小さな消費者金融で数万円借りたようだ。

「街金」というやつだ。

大手のカードローンはあらかた借りてしまい、小口の金融屋に

まで手を出しているようで、彼次第で相談には乗るが、雰囲気

では早々に飛びそうな感じだ。

会社とすれば、催促の電話がひっきりなしにかかってきていて

他の役職者も応対に困っている。

 

当事者である社員には先方と返済計画等、相談するように示唆

するが、もともと計画性もない結果が、このしつこい取り立てに

なっているので、とりあえず会社には電話せぬよう、先方には

連絡するように伝えていたのだが・・・

 

「はよ、代われや! 忙しいんじゃ! ぼけ!!」

 

見知らぬ相手なので丁寧に応対はしていたが、相手の物言いに

ついに堪忍袋が切れてしまった。

 

普段は温厚で紳士的な私だが、ピンが外れてしまった。

「どこの組が、かかっとるんじゃ。ぼけ。あほ。誰に電話しとる

んじゃ。あほ。ぼけ。ガキ。なめとんか。すぐにうちの事務所に

来んかい!」「◎▽#$$ !! @●◎ !!!」  

ボケ、あほ、ガキの連発だ。

もう何を言っているのかも分からない。

ボキャブラリーが少ないのは片隅で自覚している。

こうなると興奮して頭に血が昇ってしまい、クラクラして倒れ

そうになるが、収まらない。

 

電話口の相手も黙り込んでしまった。

「いや、こちらも本職の方と揉める気はないんやけど・・・」

 

社員から相手先の会社と担当者の氏名を聞き、いつも懇意に

している警察関係者から電話をしない旨、伝えてもらった。

どっちの本職と勘違いしたのか、それからぱったりと電話が

鳴らなくなった。

 

この顛末を横で聞いていた社員は、翌日から来なくなった。

ちゃんとフォローしなきゃダメだね。反省。




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