金曜日

運転手2


過去を振り返ると、恥ずかしいことばかりだ。

綱渡りのような転職や、不義理を重ねてきた先輩、同僚には

申し訳ないところがいっぱいある。

物の道理が分かっていなかったのだね。

特に20代は「筋の通らない」ことばかりしてきて、迷惑ばかりを

掛けてきたように思う。

受けた恩は返さなければだが、その感覚、感性もなかった。

 

世の政治家や身近にいる年寄り連中を見ると、品性下劣なジジイも

多く、経験値が人を豊かに、優しくするようでも、年を重ねれば

人格者になるのでもないようだ。性悪人間はいつまでも性根が腐って

いる。

 

小学生のころから心根の優しい、思いやりのある友もいた。

人の核(格)というものは生まれた時から備わっているのかも

しれない。人は生まれると同時に行く末が決まっているのだろ

うか。世の中にはいろいろな人がいる。

 

 

生活介護施設に通う朝の利用者の大半は知的障害の判定基準

(療育手帳)では最重度、重度の人が多く、会話が出来ない。

新しい運転手を認識しているかどうかは分からぬが、車内の

空気感は今のところ静かに流れている。

 

この3週間で、利用者の特徴、個性は感じるようになってきた。

いつも助手席に座る高齢のTさん。左に曲がるときはサイド

ミラーをのぞき込み、巻き込みに注意している。不意な飛び出しや

駐車違反には短い発声で私に知らせてくれる。

 

「ありがとう」 頬が緩んだ。

 

同じく高齢者のYさんは中度の障害で、「あつい、あつい」と後部

シートへ足を引きずりながら移動する。奇声を発する同席者に

注意を促し、「うるさい。お茶を飲んで」と緩衝役だ。

 

20歳前後の娘さん二名は、車に乗り込む際にお母さんとの目での

会話が微妙な時がある。母娘、お互いの思いがいろいろある様だ。

 

聴覚過敏でヘッドホンをかぶる一人の娘さんは、「Yさん、おはよう」

を何度も繰り返す

Yさんは何度も返答するが、「Yさん、好き、おはよう」の繰り返し。

 

「・・・もうええ」

 

20代の男性二名。一人は体格も良く、見た目はジャイアンだ。

奇声を発しながら車に乗り込む。一見武闘派だが、一度頭を小突かれた

だけで運転中は協力的だ。奇声を発するのでYさんに注意される。

 

もう一人の男性は私が頭を小突かれたときに間であしらってくれ、

穏健な感じだが、障害程度は重く、見た目では分らない。

 

毎朝、彼らを迎えに行き、無事に介護施設へ連れてくるのが仕事だ。

なかなかの個性的な面々だ。毎日同じルーティンで同じことを

繰り返していく。

2時間弱の朝の時間だが、彼らから仲間だと認めてもらえる日が

来るだろうか。安心を感じてもらえるよう注意していこう。




写真素材 pro.foto

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の投稿