金曜日

白いキャラバン


生活介護施設での勤務もか月目に入り、私の担当以外の

施設での利用者も朝の時間帯で目にするようになった。

皆さんそれぞれ個性的だ。

 

失礼ながら彼らにあだ名を付けた。

 

地面に蜘蛛のように這いつくばる「スパイダーマン」。

 

毎朝、元気よく、おはようございます、と丁寧にあいさつ

回りをする「おはよう兄ちゃん」。

 

器用に手先で「綿棒回しの男」が綿棒を回しながら施設に

入ってくる。

 

彼らは私の担当とは違うコースで同じ生活介護施設へ通う

利用者たちだ。

 

わたしがお迎えで朝、周回しながら連れてくるメンツは、

大ちゃん、たまるやん、やまさん、つづみん、ムカイの兄貴

に、最後に乗せるエリカ様の6名だ。

 

「やまさん」は過去に就労継続支援で働いていた期間もある

ようで、簡単な会話もできる。

車内で騒がしいときは仲介役で声掛けをやってくれる。

足腰はだいぶ弱ってきており、乗降時は少し手助けが必要だ。

 

「たまるやん」は正確な年齢は知らないが、おそらく私より

年下だろうと思う。彼も歩行には障害があるが、車の定席は

助手席だ。乗り込む際は補助板に足を乗せ、何とか乗り込む。

左側のサイドミラーをのぞき込み、常に巻き込み、飛び出し

には注意している。会話は出来ないが、こちらが話す内容は

理解して相槌を打ってくれる。

 

「大ちゃん」は20代で若く、一見障害がある様には

感じない風情だが、障害程度は重く、見た目では分らない。

毎朝、彼を一番に迎えに行くのだが、月二程度で寝坊か登苑

拒否がある。ヘルパーさんがいても、無理強いはできない。

若いヘルパーさんがついた日は上機嫌で朝から調子が良い。

 

2番目の「つづみん」までは距離はあるが、田舎道なので信号

も少なく、渋滞もない。閑静な住宅街だ。彼女も最重度で視力、

聴力も弱く、会話は出来ない。

いつもリカちゃん人形を手に、爪にはマニュキュアもつけて

可愛らしい。

シートベルトを私が装着し出発する。苑まで距離があるので、

いつもは爆睡している。

 

次に向かうのは「ムカイの兄貴」だ。20代で若く、体格も良く、

体力を持て余している感じだ。彼も発語が出来ないが、奇声を発し、

時には周辺の仲間をつねり、ちょっかいを出したりするので要注意だ。

テンションが高いときは、乗り込むなり、奇声を上げ、車体を叩く

ので、たいへんだ。

無視して発車する。そのうちに落ち着いてくる。

どうも意図的にやっている感は否めない。

 

最後に「エリカ様」が登場(乗り込んで)くると車内の空気が

一変する。彼女の機嫌が悪く、わめき叫ばれたら、ムカイの兄貴も

大ちゃんも、年配者二名にも緊張感が走る。

 

強度行動障害で、たびたび問題を起こしており、職員さんも

緊張感を持って接しているようだ。口も達者なので不平不満を

一気にまくしたて、車の内扉を蹴りまくり、わめき叫ぶ。

我が世代の荒れた中学生が暴れまわる様だが、まだ20歳の妙齢だ。

 

しかし、男性陣がひるむ中、つづみんだけは「我関せず」で

マイペースだ。彼女は物事には動じない。渦中の真横に座り、

いびきをかいている。

 

こうして毎朝、白いキャラバンは駆け巡っております。




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