月曜日

「必勝法」


パチンコ業界に入ったのは昭和も終わりに近づく頃だった。

元号が変わり、平成の30年間はずっとパチンコ屋で働いた。

 

地方の田舎のホールから大阪、京都を中心に自身が釘調整を

行い関わったホールは大阪では7店舗。京都でも6店舗。

会社は数社移籍したが、滋賀県で3店舗、福井県で2店舗に

関わった。

そのうち店長として終日勤務した店舗は3店舗のみで、案外

店長経験は少ないと思う。

 

店舗長を指導・補佐しながら店が円滑に運営できるように

求人募集、機種構成・機種の選定、会社からの予算に合わせ

月間の粗利予算を作成し実践していく。

 

平成の初めは連チャン機種(連続性の高い)フィーバー機を

中心に、出玉の多い3回権利機種や一発機と言われる特電機

も活躍しており、単価も高いこともあってフル稼働の店舗は

少なかったが、まだ多店舗化には遠く、競争は少なかった。

 

それから建前は、業界のINOUTのクリア化、脱税防止の

設備変更として行政はクリエーションカード化を推進していく。

大きなシステム変更だ。平成4年頃くらいからか。

 

パチンコの遊技機は特許権の絡みで新規参入、開発は難しい。

パチンコ業界の「旨味」「利権」を遊技機以外の設備関連に見出し、

行政の天下り先や関連業界へ振り分けて行こうとするが、いつの

時代でもそうだが役人が絵を描いてもうまくいかない。

 

出だしのカードは偽造が蔓延したテレフォンカードと同種で、

暴力団関係者に不正カードを大量に流用搾取され、カード会社は

多大な損失を被った。他にも利権がいろいろと絡んで、「わざと

じゃないか」と思うくらい、欺瞞に満ち溢れた嵐の船出だった。

 

しかし、行政が推進するカード化されたパチンコ設備を増やす

には、ホール側が欲しい遊技機にするのが必要で、射幸性の高い

パチンコ機械の開発は必須だった。

 

当時主力だった現金で遊べる機種はギャンブル性が高いと、順次

撤去させ、さらにギャンブル性の高いカードユニット付の遊技機に

変更させていく矛盾。

 

開発するメーカーも、それを許可・認可する行政側も、購入する

ホールも、それらを取り締まる警察も、遊技機の性能の異常性や

業界の本来の在り方(身近な大衆娯楽)からどんどん逸脱して

いき、熱にうなされたように業界は肥大していった。

 

30兆円産業。遊技人口3000万人。全国18000店舗。

 

パチンコで高まった射幸性はパチスロ機種の開発にもつながって

いき、パチンコ・スロットのホール設置比率が1:9か2:8程度

のスロット機が、5:5になり、オールスロット機のパチスロ専門店

までもが登場する次第になって、業界は完全に浮かれてしまった。

 

 

2020年4月の自粛休業。

重なるコロナ規制。

 

2022~23年

遊技機への規制、撤去。

 

昭和の時代から続く規制と緩和の繰り返し。

 

パチンコ店舗数は全国で7000軒をきっているらしい。

 

2023年からは平成に行われたクリエーションシステムから

新たにスマートパチンコ・スロットへのシステム変更。

 

規制と緩和。

 

今度の緩和はもう業界復活には繋がらないだろう。

パチスロのスペックは大阪のカジノでは活かされるかな。

 

どんな業種でもそうだけど、資本家たちはイイ思いをしてきた

し、既得権益をもつ輩たちはこれからも必死に守ろうとするだろう。

 

 

いま、パチンコ・スロットが大好きな皆さん。

ギャンブルに適度はないと自覚し、違うことに興味を振り向けよう。

 

 

「パチンコ必勝法は!?」

 

「やらないこと」



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金曜日

運転手2


過去を振り返ると、恥ずかしいことばかりだ。

綱渡りのような転職や、不義理を重ねてきた先輩、同僚には

申し訳ないところがいっぱいある。

物の道理が分かっていなかったのだね。

特に20代は「筋の通らない」ことばかりしてきて、迷惑ばかりを

掛けてきたように思う。

受けた恩は返さなければだが、その感覚、感性もなかった。

 

世の政治家や身近にいる年寄り連中を見ると、品性下劣なジジイも

多く、経験値が人を豊かに、優しくするようでも、年を重ねれば

人格者になるのでもないようだ。性悪人間はいつまでも性根が腐って

いる。

 

小学生のころから心根の優しい、思いやりのある友もいた。

人の核(格)というものは生まれた時から備わっているのかも

しれない。人は生まれると同時に行く末が決まっているのだろ

うか。世の中にはいろいろな人がいる。

 

 

生活介護施設に通う朝の利用者の大半は知的障害の判定基準

(療育手帳)では最重度、重度の人が多く、会話が出来ない。

新しい運転手を認識しているかどうかは分からぬが、車内の

空気感は今のところ静かに流れている。

 

この3週間で、利用者の特徴、個性は感じるようになってきた。

いつも助手席に座る高齢のTさん。左に曲がるときはサイド

ミラーをのぞき込み、巻き込みに注意している。不意な飛び出しや

駐車違反には短い発声で私に知らせてくれる。

 

「ありがとう」 頬が緩んだ。

 

同じく高齢者のYさんは中度の障害で、「あつい、あつい」と後部

シートへ足を引きずりながら移動する。奇声を発する同席者に

注意を促し、「うるさい。お茶を飲んで」と緩衝役だ。

 

20歳前後の娘さん二名は、車に乗り込む際にお母さんとの目での

会話が微妙な時がある。母娘、お互いの思いがいろいろある様だ。

 

聴覚過敏でヘッドホンをかぶる一人の娘さんは、「Yさん、おはよう」

を何度も繰り返す

Yさんは何度も返答するが、「Yさん、好き、おはよう」の繰り返し。

 

「・・・もうええ」

 

20代の男性二名。一人は体格も良く、見た目はジャイアンだ。

奇声を発しながら車に乗り込む。一見武闘派だが、一度頭を小突かれた

だけで運転中は協力的だ。奇声を発するのでYさんに注意される。

 

もう一人の男性は私が頭を小突かれたときに間であしらってくれ、

穏健な感じだが、障害程度は重く、見た目では分らない。

 

毎朝、彼らを迎えに行き、無事に介護施設へ連れてくるのが仕事だ。

なかなかの個性的な面々だ。毎日同じルーティンで同じことを

繰り返していく。

2時間弱の朝の時間だが、彼らから仲間だと認めてもらえる日が

来るだろうか。安心を感じてもらえるよう注意していこう。




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ぱちんこ屋


パチンコホールの営業時間は店舗が立地する組合(都道府県)

によりまちまちだ。9時か10時開店、23時か24時閉店。

24時閉店の店舗は日が変わる前には店内から遊技客を一掃

しなければいけない。開店前も閉店後も時間外に遊技客を

ホールに入れてはいけない。

景品交換もあるので15分前には閉店告知マイクを入れる。

 

年末年始には京都や三重の観光地など、特別営業として、日を

またいで25時まで、もしくはオールナイト24時間営業も可能

な地域もあり、それぞれの都道県ごとの組合の申し合わせにより

さまざまだ。

(当然、公安、所轄の承認の元、観光地での治安やトイレ不足

解消のため始まったようだが、コンビニが各地に普及している

現在、パチンコ店の営業時間延長は不要だろう)

 

「本日も最終最後までのお付き合い、誠にありがとうございます」

 

「明日もご近所お友達お誘いあわせの上、揃ってご来店いただけます

よう、店主並びにスタッフ一同、こころよりお願い申し上げます」

 

店内放送はいつも回りくどく、大げさだ。

 

「本日もお足元の悪い中、お忙しい中、多数のごひいき、ご来店

誠にありがとうございます」

 

「本日も常日頃のお約束通り、出ます出します取らせますの三拍子は

もちろんのこと、1番台は元より、最終ナンバー○○○番台にいたり

ますまで、どちらのお客様もご満足いただけるよう、釘調整、機械

調整は万全に、大きく、広く、開けてございます」

 

「さすれば、さあ、どちらのお客様も、お時間の許されます限り、

ごゆっくりとご遊技下さり、本日のよりよきラッキーを、ご幸運を、

しっかりと、がっちりと、さあ、さあ、お掴みとり下さいませ」

 

「ありがとうございます、いらっしゃいませ、いらっしゃいませ」

 

昔のホールは4、9抜きで遊技台の通し番号に4、9、14・・・

は使用していなかったが、経営者の考え方次第だ。

 

最近はコンピューター音声で案内放送を流すので、人が発声する

のは、緊急時の時ぐらいだろう。

 

2023年度からは、玉やコインが個別の遊技機内のみ循環する

スマートパチンコ・スロットになれば、遊技玉が島内に流れる音などの

騒音もなくなり、店内のノイズは遊技機から発するゲーム音だけになる。

店内のBGMから流行歌が流れなくなり、マイク放送もない。

 

たばこの煙とガラス面にあたるガチャガチャとうるさい玉の音、

かしましい遊技機のゲーム音、勝った負けたの殺気が漲る人込みで

あふれる喧騒のホール。その時々の記憶に残る歌謡曲。

 

「賭場」の匂いもなくなって久しいが、昭和から知る「ぱちんこ屋」は

これからもっと大きく変わっていくのだろう。




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