木曜日

初心者 (昭和)


釘をたたき出したのは入社して2年が

経過したぐらいだ。前任者が急に辞め、

調整担当者のなり手がおらず、

他人にやらすなら、身内にやらそう、と

いうわけだ。

 

最初の手ほどきは会社の専務から、

ハンマーの持ち方、叩き方、

調整道具の使い方など基本的なことだけ。

 

遊技台のデータはIN(補給された玉)、

OUT(打込んだ玉)、差玉(黒か赤か)、

手書きの大当たり回数だけだった。

 

個別の売上は、当初のサンドは遊技台2台に

サンド1台だったので、

正味の1台ごとの台売上はわからない。

 

ベテランの釘師はいたが、教えてくれない。

職人は技能を盗まれると自分の職を失うと

思われていた。

少し離れて見るだけなら構わない。

 

見様見まねで始めたが、

いうことを聞いてくれない。

思うようにいかない。


当時は普通電役などの釘を異様に曲げて、

本来の性能から逸脱させ、

ある箇所に入れば、店側が強制的に

止めなければ終わらない、という

いわゆる「一発機」が人気台として

設置されていた。


基盤内の確立で大当たりが

左右されることがなく、

完全に「釘師」と「打ち手」との勝負だ。


出玉が止まらない。毎日連敗だ。

シメてもシメても常連客に出される。

なんせ一発(一個)はいったら4000個だ。

40個百円交換だったから一万円。

 

毎夜、朝まで試行錯誤するが、ダメだ。

毎日寝られない。

 

今ならわかるが、当時の初心者の

「甘い若造」には、荷が重すぎた。


マルホン社の「キャラバン」という台だ。

結局この台は、利益を出すこともなく

早々に撤去した。

 

その後、数年間はこの時の悪夢に悩まされ続けた。






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ホルコン

 

ホールコンピューター

よく客から

「ホルコンいじって(操作して)玉出してよ」

とか言われる。

なぜかホルコンが不正の装置のような印象がある様だ。

 

ホールコンピューターは遊技台の

すべてのデータを集積し、表示してくれる。

それだけだ。ホルコンから能動的に

遊技機の性能に影響することはない。

遊技台の個別のイン、アウト、差玉、スタート回数、

ベース値、他出玉、大当回数、一回の出玉(T1Y)、

総出玉(TY)やその他の平均打込や、割数などなど。

これらは遊技台の裏にある基盤の情報線から台に

個別に設置されている台コン(ピューター)を経由して、

事務所やカウンターのホルコンに集約される。

 

これらの情報をもとに「釘師」は調整や営業の戦略を立てる。

便利な時代だ。昭和にはなかった。

「勘」から「情報」になった。

 

しかし多くの客はこのホルコンは

遠隔で遊技機を操作できると信じているようだ。

 

私は幸い自分が今までいた会社、店舗では

不正(遠隔操作)に関わったことはない。

しかし、現実に警察に検挙されたホールも実在し、

業者からや同業者から話は聞いたことはある。

 

法外な費用を出せば確率の操作はできるようだ。

もちろん違法で、発覚すれば営業許可の取り消し対象だ。


人気台、看板台があった時代は遊技機の寿命も長く、

検定期間は3年だがプラス3年再認定、またそこから

みなし機という呼称で延長できる期間もあった。

そういう時代は固定の遊技機に法外な装置を付けても

費用は回収できただろうが、近年の機械の設置短命化では

遠隔を仕込むホールなど皆無だろう。








 

火曜日

梁山泊 2 (平成)

 

ところが、常連の女性客が打ち出し、

大当たりを引き出すと、連チャンがとまらない。

10連チャンまでは

「まあ、たまにあること」

15連チャンになると

「これはおかしい」

20連チャンでは

「たいへんだ」


この「春一番」という機種は

液晶上部のランプと大当たりの

天国モードが同期しており

それを狙い打つのが攻略打ちだったのが、

このランプの点滅が壊れていたらしい。

自動的に毎回終了後天国モードに入り、

連チャンが止まらなくなった。

 

私はもうこれくらいの頃から開き直っていたので

「常連のいつも負けているおばちゃんだ。

いくとこまでいって、とことん勝ってもらおう」

 

ところが大当たりを引いている当人が、

あまりにも当たりが連続し、怖くなった。

「もうやめる。止めて。怖い、いやだ」

 

あまりにもたくさん勝っちゃうと、

もう遊びではなくなったんだね






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