月曜日

古傷

 

冬の季節になると、右の人差し指の第二関節当りがうずく。


40年前に喫茶店のバーテンダーをしている時に、タンブラーを

洗っている際にガラスが割れ、スポンジを持つ右手指をすぱっと

切ってしまった。すぐに切り傷を何針か縫ってもらったが、人手不足で

店は忙しいので、翌日から指サックをはめ、通常通りに勤務していた。

今でもうっすらと傷が透けるように見え、寒い季節になると指がうずく。

 

事故等で失った手足が、あるかのように感じる「幻肢痛」も不思議な感覚

だろうが、40年も前の小さなキズが今も痛く感じるなんてのも変だが。

 

10年前の心臓手術では、胸を正中切開で縦に胸骨から筋肉も切断したの

だから、小さな切り傷以上に長く痛みを感じるのかと思ったが、胸の

20センチ近い傷は冬の寒さにも動じない。

 

切った瞬間の痛みは麻酔中で、感覚がないのだから、記憶にも残らない。

なので案外手術痕は大きく残ってはいるが、切った痛みは残っていない。

 

心体のキズは、

大きな出来事よりも、ほんのちょっとした出来事や思い出のほうが

案外こころに引っかかっていて、あの時の一言や、あの時の瞬間が、

ふと蘇って、いまも胸に蟠(わだかま)っているのがあるよね。

 

ひとには話したくない。死ぬまで内緒。

 

ひとはみんな闇があるんだよね。生きていれば。




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