金曜日

争い④


弁護士を入れて裁判所に出頭し、司法上の争いまで経験するのは

一般的にはあまりないだろうね。私も50才になるまで、自身が

法廷に立ち、証言するなど夢にも思わなかった。

 

そもそも私はこの一家とは全くの他人だ。雇用された労働者だ。

肩書は「専務取締役」だったが、役員として登記されている

わけでもなく、名ばかりの肩書なのだ。役員報酬ではなく、

給与所得で申告しており、息子たちの肩書が上がるに合わせて

任命されていただけだ。

 

数年間にわたって親族間の争いに巻き込まれたことは今思うと

親兄弟間で分裂し、会社を分けた時点で辞めるべきだった。

 

次男は私が入社した時から、ずっと私に依存し、父親や兄との

折衝役に私を挟み、親兄弟と反目してきた。

 

「あんたがおらんかったら、弟は何もできん、あかんたれや」

「会社が分かれる羽目になったのは、あんたのせいや」

今は亡き会長(父)や長男から言われたことは忘れられない。

 

20年もお世話になった会社に誰にも連絡できず、この20年の

キャリアは無かったことになってしまったようだ。

寂しい限りだ。




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争い③


二足の草鞋生活は7~8年続いた。

清掃会社の方は私が一人、係長に抜擢し、

日々の管理は彼に任せた。

彼とは今も付き合いがあり、独立して頑張っている。

 

そのうち、糖尿と躁鬱の持病のある長男もパチンコ業の専念

で元気になり、私は、パチンコは長男を社長として立て、

清掃会社は次男を社長として助けながら、無難にやって来た。

 

その後パチンコ業には長男の息子が入社したころから、

兄弟間の確執が父親を挟んで本格化していく。

売上収入の格差は、P店と清掃会社では

大きく、次男はもとより清掃会社を継ぐにあたって、

父から別案件の不動産や現金を補填してもらう約束で、

パチンコ業から身を引いたのに、父親は約束を反故にしたらしい。

齢80だが、引退する気は毛頭なく、お金の執着心は強かった。

 

次男(嫁)は黙ってはおらず、会長(父)も約束を反故した手前、

引け目もあったのだろう。

いったん分けた会社に長男、次男がまたそれぞれ持ち株を半分ずつ

分配し、長男は清掃会社からの報酬を、次男はまたパチンコ店に

副社長として復任し、自分の長男を入社させた。

 

それ以降毎日のように社内で

長男(社長)次男(副社長)の争いに、

今度はそれぞれの嫁、息子を巻き込んで、

私はシーソーの支点に立たされ、

左右のバランスをとるために行ったり来たりして来たわけだ。

 

「金持ち喧嘩せず」とはならず、株持ち分は50:50のため、

「裁判」で双方の主張をしていくこととなった。




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争い②


清掃会社の方は私には、まったくの未経験なので会社への進言も

なにも、右も左もわからない状況だった。

社内でもパチンコから来た新参者のため社員も様子見だった。

 

仕事を理解するには、社員と同様にシフトに入って、同じ作業を

経験しなければわからない。

 

清掃業の朝は早い。し尿の収集は6時には出発する。

大型ごみの回収・市内のゴミ回収は7時から始まる。

パチンコ店の閉店は23時。報告・指示終了後24時に

帰宅し、翌朝清掃会社へ出社する生活が続いた。

 

し尿の収集は原則3名だが、2名で行っていた。

助手としてバキュームカーに乗り込み、午前中に終了する。

 

大型ごみ回収は、こちらも原則は3名だが、2名で経費削減だ。

助手として、事前に連絡のあった不要家具やベッドなどを、ほぼ

一人でパッカー車へ放り込み粉砕していく。腕や指を挟まれ切断

した社員もいる。油断大敵だ。

 

夜間はホテルの浄化槽清掃・汚泥の抜き取り・処理なども経験した。

し尿も、汚泥も、生ごみも、場合によっては手でつかんで処理もした。

営業にも回った。業者組合にも出席した。何も厭わず何でもやった。

 

オーナーからの要請で、経費削減、給与カットをしなければならな

かったからだ。

 

市内のごみ回収は、私が心臓手術のために数か月間職場離脱したので

以降は機会がなく経験しなかった。

 

ある日、ごみ回収車が人身事故を起こした。相手は自転車に乗った

主婦で、けがの程度は軽いとの報告だったが、地元のやくざの連れ

だったようだ。

事故当事者が、あいさつに伺う旨を伝えると、「事務所に来い」と

云われた様だ。

「事務所」に行くのは通常ならお断りだが、被害者側の指定なら

仕方がない。腹を固めるしかない。

菓子折り、缶ビールを2ケース購入し、当事者と私2名で向かう。

車内で万が一の時の打合せをし、指定の住所に。

 

何のことはない。被害者側の自宅だ。主婦の連れはたしかに一般人

ではないが、まだ若く修行中のようだ。治療代、休業補償、慰謝料など

あれこれ言ってくるが、こちらは「保険会社へ一任」とだけ伝えて、

世間話をして帰って来た。

保険会社には、かなりごねていたようだ。




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